でんしゃ

今日の帰りの電車は、いつもと少し違った。
電車に乗ったはいいが、なかなか出発しないのだ。
車内アナウンスや駅構内アナウンスで、事故発生のために全車両運転を見合わせているというような、内容が流れている。
そんな日に限って、暇つぶしの道具を持ち合わせていない・・・。
眠ろうにも、昨夜13時間も寝ていては、眠れないのだ。
25分程遅れて、電車が動き出した。
やっとかと思いながら、動き出す前と同じように、車内をぼーっと眺めたり、下を向いて目を瞑ったりしていた。
いくつか、駅を通り過ぎると、隣に座っていた歳を取ったものが立ち上がり電車を降りた。
次に私の横に座るのは、誰だろうかと、顔を上げると、高校の制服を着たものだった。
女子高生と世間では言われているものだ。
意識しなくても、なんだか心が踊ってしまう。
気にしないようにと、腕を組んで、下を向き、目を瞑る。


左肩に何かが当たって、目を覚ます。
隣に座ったものが、横に倒れてきたのだ。
お疲れのようだ。
完全に私に体を預けて眠っていらっしゃる。
ちょっと、ドキドキ。
遅れを取り戻すかのように、電車が激しく揺れても、私に寄りかかっているものは目を覚まさない。
ちらりと横を見ると、さらりとした清潔そうな髪の毛が、左肩に生えていた。
あまりにも、その髪の毛は、すやすやと眠っているから、それを起こすのも悪いと思ったから、体を起こさず、また目を瞑る。
髪の毛の反対の肩には、座席の端の金具が光っている。
私も、その金具に倒れるようになっているから(倒れるといっても、電車の座席だから、少し傾いてるぐらいだが)、その髪の毛のついたものは、完全に私に体を預けている感じでぐっすりと眠っている。
しかし、意識のある中この体制は、少しつらい。
一人分の余裕な体重がかかってるせいか、右腕は金具の角に当たって痛いし、右斜め下に顔を向けているせいもあって首筋も痛い。
でも、女子高生が私に体を預けているという状態が、そのつらさを無しにしてくれている。
最寄の駅についたら、降りなくてはいけないのだが、体を預けているものが、その駅までに降りなかったら、そのままでいようかなんて考えながら、電車に揺られていた。


結局、最寄の駅で左肩に乗った髪の毛は無くなり、同時にそれがくっついたものも、起き上がった。
一緒に起きたが、顔を見上げた時に、前に立っていた高校の制服を着たものが、私も見る目が明らかに「変なもの」を見る目だったのが、印象的だった。
おわり。
※一部デフォルメしているが、事実に基づいてます。